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一級建築士でニコハウス設計室代表の鈴木です。
豊橋市で昨年施工させていただいたEさま邸の1年点検でお伺いしてきました。
25坪とコンパクトな住まいです。
家具デザイナーらしく、いつ行ってもきれいに飾りつけされていて気持ちいい。
1年経つと、当たり前ですが1年間の住みごこちがどうだったのかをお伺いできます。
この住まいは踏み天井と呼ばれる昔ながらの天井で、2階の床の裏側が見えています。
大きな梁に対して小梁と呼ばれる床合板を支持する小さな梁がリズミカルにかかっています。
普段は見えなくなる部分ですが、この住まいでは目視できますので、確認すると1年の間に大きな梁は乾燥が進み幅が小さくなっていました。
構造的には問題ありませんが、約5㎜ほどは縮んでました。
普段、家具をデザインされている方なので木のことはよく理解されています。
建築当時コストを抑えるため、プライベートな2階は思い切ってラワン合板を床に使用しました。
合板の場合、床材と違い『実(さね)』と呼ばれるお互いがジョイントをする差し込みが出来ず、突き合わせるよう施工します。
施工当時も『ささくれなど、どうだろう?』と少し不安だったのですが、普段から木をよく知るEさまなので、ご自身でオイルまで塗っていただきいい飴色変化をしています。
引き渡し当時はささくれなど出たようですが、今は馴染んでむしろいい雰囲気。
オイルを塗り、よく歩くところは人間の足裏で少しづつ研磨され、いい艶感になっています。
私たちだけでなくお施主さま的にもラワンの床ありだよねーってお話になり、理解いただける方で費用押さえたい方には今後おすすめしてもいいかなと思いました♪
コンパクトなので、大きな収納部屋は取れていませんが、上手にミニマルに住まわれているので雑多な感じはせず、しっとりした空間に癒されます♪
1階と2階の温度差について、お話が出ました。
1階には大きな窓があり、季節と時間によって日射は入ってきます。また日射が入ってなくても、地面からの熱の放射で暑く感じてしまいます。
タープをかけるのが一番高価的ですが、植栽などが眺められなくなるので悩むところです(汗)
今年はとりあえずタープなしで過ごされたそうですが、冷房エネルギーとは常に闘いが起こることになりますのでなるべく遮蔽することを改めてお勧めしてきました。
今の時期の日射はまだ残暑が厳しいので必要ありませんが、問題は春先。
日射をふせぐということは、3月頃の肌寒い時期の日射が入ってこなくなるということです。
どちらを選ぶのが大切なのかというと、日射エネルギーを暖房エネルギーとして利用する方が有効です。
そのため夏場は屋外で日射遮蔽をすることをお勧めしています…、来年はぜひ。
コンパクトながらこの住まいでは階段下をヌックとして利用しています。
一般的には物入にしてしまいそうですが、計画当初の通りしっかりヌックで活躍。
マットなどを敷くか迷われたそうですが、お子様がここから出てこなくなるだけでなく、そのまま寝てしまいそう…とのことで床座のままに。
それでも普段からずーっとここを使われているらしく、やっぱり人間は狭いほうが落ち着くんだなということを改めて実感。
この住まいで他にもチャレンジしたことは、トイレの窓の有効活用。
一般的にトイレの窓は換気や明るさのために窓を設けますが、コンパクトな住まいの場合、それだけではもったいない。
この住まいでは玄関ホールの抜けた視線としっとりした明るさ確保のため、トイレの窓も景色を切り取る窓として採用しています。
陰影礼賛の話をしたことを覚えていますが、その通りの使い方をしていただき、またこの窓の存在をほめていただき設計者としてとてもうれしく思いました。
点検時にお聞きする最後の内容は使用エネルギーがどのぐらいなのか?
脱炭素社会に向けて、少ないエネルギーで快適に過ごすことは、建築屋の使命でもありますので出来る限り聞き取りをするようにしています。
この住まいは熱交換の1種換気を採用し、C値は0.2程度。エアコンは冬用の床下エアコン6帖用と、2階の夏用エアコンの2台。
簡易的な全館空調となっています。オール電化で光熱費も高くなっている中で、このエネルギー使用量はすばらしいと思います。
太陽光はついていないため創エネはできませんが、エアコンを使わない月はおおよそ350~400KWhほど。電気代にして12,000円前後。
エアコンを使うと、夏場、冬場共650KWhほど。エアコンの分は250~300KWhぐらいでしょうか。1日10kwh使わないぐらい。
1月の電気使用量と、8月の電気使用量はほぼ同じぐらいなのに、電気代が5000円ほど変わっているのは、改めて今後上がり続けるであろうエネルギーコストの怖さを感じました。
コンパクトで居心地がよく、打ち合わせの時のように話がはずみあっという間に1時間半経過。
Eさま、コーヒーとおやつご馳走様でした。
今後も引き続きよろしくお願いいたします。
次回は2年点検ですが、その前にぜひ撮影させてください(汗)。