北欧の旅 ⑧。

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豊橋市の工務店。ニコハウス設計室代表で一級建築士の鈴木です。

もうすでに1か月前になってしまった北欧旅。遠い過去になってしまいそうですが学びの多い機会だったため思い出してあと少し書きたいと思います。

残り2日間の貴重な時間、最初の訪問先は憧れのアルヴァ・アアルトの自邸です。

フィンランドに来る前までは、興味のある建築家の一人だったアアルトですが、ここまで来てアアルト建築の魅力に引き込まれています。

日本の建築家にも多くの影響を与えているのがとてもよくわかる。住宅というスケール感にどう落としているのかもとても興味がありました(豪邸ではありますが…)

日本の建築ではどう外部空間とつながるのか?というのがあり、引き戸文化の日本は気候的な厳しさが北欧ほどではないためより外が近い関係にあります。

アアルトの自邸にも庭はあります。周辺環境が当時と変わったこともありますが、外部とのつながりはなぜこの設計をしたのか理解は出来ませんでした。

敷地にたくさんの余白はありますが、有効に使えているのか?というと私は疑問を感じました。

でもきっと何か意味はあるはずです。これを理解するためにも再度の訪問が必要ではないかと思いました。

室内はこれまで見てきたアアルトデザインが住宅レベルにぎゅっと詰まっています。

玄関からリビングへつながり視線がどう抜けていくのか?などは日本でみる著名な建築家の住まいと同じ感覚を持ちます。

日本と違い、人の居場所には必ずペンダントライトが低く吊り下げられています。

この作戦は私もよく真似させていただきますが、リビングの真ん中にペンダントを下げてくるのは設計でもなかなか理解はしていただけません。

特に子育て世代だと邪魔だからでしょうが、こういった落ち着きのある空間設計を心がけていきたいものです。

仕事場へと抜けていく視線の先の窓の取り方と高低差、距離感の使い方は必ず真似をさせていただきます。

細かなディテールの部分も多くの写真を撮りましたが、まとめて北欧旅 番外編ブログで紹介しようと思います。

自邸からある程度離れていたのか?歩いて行ったのか?忘れてしまいましたが続いてスタジオ・アアルト(アアルトの事務所)に行きました。

これまでと同じく何度も本で見てきた実物件をみることになるのですが、アアルトの事務所も魅力がつまっています。

道路から敷地内は下り坂になっていますが、この事務所も高低差を利用した様々な仕掛けがあります。

社員食堂、スタジオ、屋外の劇場のような空間など。

事務所の入り口はそれほど広くはありませんが、階段をあがっていた先にある事務所空間とアトリエ空間は見ごたえたっぷり。

事務所の空間の光は高窓から採光をしていますが、中庭が見えないように光を取り入れているのがあとからわかりました。

視線の交差なく設計しているのは、私の今後の設計でも活かしていきたいポイントです。

そして憧れのアトリエへ。

カメラ2台を使って、写真を撮りつつでも空間をゆったりと楽しみたいから椅子にゆっくり腰かけてみたり。

とにかく忙しかったですね。

飽きるぐらいに行きたい。そう思いました。

高低差を使った劇場型の中庭はわざと白い壁が設けてあり何か投影していたのでしょうか。

階段なのか座る場所なのか、アアルトの設計によく出てくる高低差の処理ですが住宅でも提案出来たら楽しいだろうなと思いました。

素材一つ一つに経年美を感じ、素材の持つ美しさを改めて知れたのもこの旅で良かった部分です。

弊社は新建材やビニール素材の材料を使わない宣言をしていますが、50年以上経った建物を見るとそういったことが正しいということが容易に理解できます。

特に日本を含めたアジアにはいい素材やいいデザインに似せたコピーを作ることを得意としていますが、フィンランドではたとえその技術があってもコピーを作りません。

それは素材をリスペクトしてのことだと思いますし、偽物を作らないのはそのデザインを守ることにもつながるわけで文化の違いや姿勢に感服いたしました。

次の予定までに少し時間があったようで、ユハレイヴィスカ設計のミュールマキ教会を見ることが出来ました。

仲間みんなで大人買いした照明器具の小型版も見られました。

フィンランドの高度の低い光を取り入れられる設計と照明の多灯使いによる幻想的な空間。

現地案内していただいたこばやしあやなさんはレイヴィスカの授業を受けたことがあるそうで、とてもうらやましく感じました。

旅はいよいよ佳境に入ります。

そして私のエコハウス大賞の発表も刻々と迫り、少しずつ気が重くなってきているのがこのころです。

もう少しだけ北欧旅ブログは続きます。

お付き合いをいただきありがとうございます。