夏季休業終盤の建築旅。
豊橋市の工務店。ニコハウス設計室代表で一級建築士の鈴木です。
ここ数年夏季休業の終盤に日帰りで行ける範囲での建築旅に必ず出かけるようになりました。
今年は学んでいる『京都鴨川建築塾』での学びを活かして岐阜県美濃市のうだつの上がる街並みへと足を運びました。


『うだつ』とは両隣からの延焼を防ぐための防火壁。
国の重要文化財や市の文化財にもなっている住宅は江戸末期の頃から残っている建物です。


こういった場所で私が何を学んでくるのか?
現在の住まいも必ず何かから派生してきた造りや考え方だと思っているので、その原点のようなものを感じ取ってそれを今後の住まいに活かすということを考えて見学しています。
このうだつが今の住まいで必要か?と言われれば『必要はない』とはっきりお伝えします。
でも隣が近い場合に防火壁がいるのか?といわれれば建築基準法でもありますが、『防火構造』で造る必要があります。
日本各地のこうした街並みの過去の大火事から防火に対する考え方が発展しているわけです。


美濃市では日本三大和紙の一つの美濃和紙も有名ですが、私が知らなかったことを『らんたんや』さんで教えていただきました。
本美濃といわれる和紙で造られた照明器具はランプ本体が透けて見えないそうです。
本美濃は美濃和紙の中でも1割程度しかない高級な和紙。
ほとんどの照明器具は一般的な美濃和紙で造られているようで、その違いや歴史をいろいろと教えていただき1つ小さな照明を購入してきました。

本美濃には刻印があるので素人でもわかりやすくなっています。
今後のお施主さまの住まいでもこのお話しをして、日本の伝統的なものを大切にした提案をしていきたいと強く思いました。
また和紙を使った障子の良さを改めて感じました。
散策をゆっくりしたかったのですが、あまりにも暑かったので涼しい場所へということでまだ行ったことのなかった伊藤豊雄さん設計の『ぎふメディアコスモス』( 図書館などのある複合施設)に移動いたしました。
画像では見たことがありましたが、実際に入ってみると空間の気持ちよさを感じ、岐阜市の方がうらやましく感じました。


人の居場所にだけ光が落ちてくるのは、場所の心地よさを動物的な感覚で感じ、そこに向かって歩きゆっくりしたくなります。
その居場所をモンゴルのゲルのような囲まれ感のあるもので覆うことにより落ち着く場所になっています。
規模感は違えどこの考え方は住宅にも通ずるもので、大空間のみでは落ち着かないので、その大空間を程よく囲うことで落ち着く空間がうまれます。
例えばリビングなど人がゆっくりする場所は大空間であるよりも、むしろ天井を低くし囲まれ感のあるソファーコーナーなどにした方が圧倒的に落ち着きます。
今回の夏季休業終盤の建築旅も充実した時間となりました。
休みボケした体で毎年暑さで死にそうになりながら見学に行きますが、来年どこに行こうか?
休業明けの仕事、頑張ります!