「木の外壁は腐るからダメ?」30年後まで考える外壁材の選び方
豊橋市の工務店。ニコハウス設計室代表で一級建築士の鈴木です。
今回の内容は『木は腐るよね』についてお伝えします。
先日の内覧会で、
「木は腐るんじゃないですか?」
「ハウスメーカーや地元工務店から、木の外壁はダメだと言われました」
という声をたくさんいただき、同じお答えを何度もさせていただきました。
せっかくなので、改めてみなさんにもお伝えしたいと思います。
① 木は腐りますか?
はい。乾かない状態が続けば腐朽菌が活動し、木は腐ります。
反対に、きちんと乾く環境をつくってあげれば、古い木造建築を見ても分かるように、乾燥できる環境では非常に長く使える材料になります。
だから大切なのは、
「木だから腐る」のではなく、「木が乾くようにつくられているか」
だと考えています。
② メンテナンスが大変じゃないですか?
傷んだ部分だけ交換できます。
そのため、もし一部が腐ったとしても、外壁全体をやり直す必要はありません。
そして木には基本的に「廃盤」がありません。
20年後、30年後でも同じ樹種・同じ寸法に加工して交換することができます。
これは長く住む家では、とても大きなメリットだと思っています。
③ 色は変わりますか?
変わります。
無塗装の木は年月とともに徐々にシルバーグレーへ変化していきます。
その変化を経年変化として楽しめる方なら、そのまま使うことができます。
新築時の色をなるべく維持したい方には塗装をおすすめしますが、その場合は当然、定期的な塗り替えが必要になります。
もうひとつ、木の特徴としてお伝えしたいことがあります。
木は水分を吸いますが、乾くこともできます。
外壁の裏側にきちんと通気層を設け、水分を排出し乾燥できる環境をつくる。
木の外壁を長く使ううえで、これはとても大切なことだと考えています。
以上のようなお話を、内覧会ではさせていただきました。
では逆に、
木と比較される他の外壁材は、本当にメンテナンスが少ないのでしょうか?
サイディング、ガルバリウム鋼板、タイル、塗り壁。
どれも優れたところがある一方で、それぞれに弱点があります。
ここからは、それぞれの外壁材について「長く住む」という視点から考えてみたいと思います。

サイディングについて
現在の住宅で最もよく使われている外壁材のひとつが、窯業系サイディングです。
サイディングの最大のメリットは、なんといってもデザインの豊富さでしょう。
色も柄も非常に多く、木目、石、塗り壁調など、さまざまな外観を比較的簡単につくることができます。
一方で、長く住むことを考えると知っておいてほしいこともあります。
窯業系サイディングは、セメント質原料などを主原料とした板です。
そのため、表面を工場で塗装して水から守っています。
つまり大切なのは、サイディングそのものだけではなく、表面の塗膜も含めて外壁としての性能を保っているということです。
塗膜が劣化し、水分を吸いやすい状態のまま放置すれば、反りや膨れ、凍害など、基材そのものの劣化につながる可能性があります。
そのため、サイディングは状態を確認しながら、いずれ再塗装などのメンテナンスが必要になります。
最近の工場塗装は非常に高性能になり、長期保証された商品も増えました。
ただし、その塗膜も永久ではありません。
そして一度再塗装の時期を迎えれば、その後は現場で塗装して維持していくことになります。
工場で管理された環境で塗装された新品時と、既存の外壁を洗浄・下地処理して現場で塗り直す再塗装では条件が違います。
だから私は、最初の塗装が何年もつのかだけでなく、その後、何度メンテナンスすることになるのかまで考えて外壁材を選ぶことが大切だと思っています。
また、光触媒などの高機能な表面処理によって、長期間の美観維持をうたう商品もあります。
これも非常に優れた技術です。
ただ、ここにも将来のメンテナンスという視点が必要です。
光触媒などの難付着性の表面は、汚れを付きにくくする一方、将来再塗装するときには塗料も密着しにくくなる場合があります。
そのため、適合する下塗り材を使ったり、事前に付着性を確認したりする必要があります。
汚れを付着させないことを追求した外壁に、将来は塗料を付着させなければならない。
ここは、高機能なサイディングを選ぶときに知っておいてほしいところです。
そして私がサイディングでもうひとつ重要だと思っているのが、表から見えない外壁の裏側です。
窯業系サイディングは、表面だけを見ていればいいわけではありません。
外壁の内側には通気層を設け、万が一入った水分や壁体内の湿気を排出し、乾燥できるようにつくります。
この通気層がきちんと機能していることが、とても重要です。
通気がうまく取れていなかったり、水分が抜けにくい納まりになっていたりすると、表からは分からない裏側で水分の影響を受けることがあります。
特にバルコニーまわりなど、納まりが複雑で通気を確保しにくい場所では注意が必要です。
サイディングが悪いのではありません。
むしろこれほど普及した理由のひとつは、施工方法が規格化され、職人による仕上がりの差を比較的小さくしやすいことだと思います。
現場で一から仕上げる塗り壁などと比較すると施工品質を安定させやすく、デザインも豊富。
とても合理的な外壁材です。
だからこそ、
「サイディングだから安心」でも、「サイディングだからダメ」でもありません。
表面の塗装だけではなく、目地、下地、通気層、そして将来の再塗装まで含めて考える。
結局ここでも大切なのは、
「何年もつ外壁か」ではなく、「傷んだときにどう直しながら使い続けられる外壁か」
だと思っています。
コーキングについては当たり前のことかなとおもうのであえて触れるのはやめておきます。

ガルバリウム鋼板について
耐久性という点では、内覧会でもガルバリウム鋼板のお話をさせていただきました。
弊社では外壁よりも屋根で採用することが多い材料です。
では、なぜ屋根にはガルバリウム鋼板をよく使うのか。
まずガルバリウム鋼板のいいところは、表面の塗装が劣化したからといって、すぐに雨漏りするわけではないという点です。
塗膜の下には金属の板があり、その板そのものが雨水を防いでくれます。
さらに屋根の場合、長尺の一枚物として施工できるため、途中の継ぎ目を非常に少なくすることができます。
これは防水を考えるうえで大きなメリットです。
ただし、ガルバリウム鋼板もノーメンテナンスではありません。
ガルバリウム鋼板そのものを守っているのは、サイディングと同じように表面の塗膜です。
長い年月が経てば塗膜は劣化しますので、状態を見ながら将来的には再塗装などのメンテナンスが必要になります。
では、なぜ弊社では外壁より屋根に使うことが多いのか。
ここには「雨」が関係しています。
金属外壁には大気中のほこりや汚れ、塩分など、さまざまなものが付着します。
屋根や雨のよく当たる外壁であれば、それらは雨によって定期的に洗い流されます。
ところが軒下など、雨の当たらない場所は違います。
付着した汚れや塩分などが雨で流されず、そのまま残り続けるため、腐食や白さびなどにつながる可能性があります。
そのためメーカーも、雨のかからない部分については定期的な水洗いを推奨しています。
これが、弊社がガルバリウム鋼板を屋根にはよく使い、外壁への採用には少し慎重になる理由のひとつです。
外壁にガルバリウム鋼板を使いたいという場合には、弊社では雨が外壁に当たる納まりも含めて考えます。
反対に、深い軒があって雨の当たらない場所にガルバリウム鋼板を使うのであれば、
「ここは定期的に水で洗ってくださいね」
とお伝えしています。
「軒があった方が外壁は長持ちする」
これは一般的にはその通りです。
ところが材料によっては、雨に当たらないことによる注意点もあります。
ここが家づくりの面白くて難しいところです。
ガルバリウム鋼板は耐久性に優れ、とてもいい材料です。
でも、
「ガルバリウムだから長持ちする」ではなく、「どこに、どのように使うか」まで考えて初めて、その材料の良さを生かすことができます。
そして、ガルバリウム鋼板も決してノーメンテナンスではありません。
材料の特徴を理解したうえで、上手に使っていきましょう。


タイル外壁は本当にノーメンテナンス?
「タイル外壁はノーメンテナンスです」
そんな説明を聞くことがありますが、私はこの言い方には少し違和感があります。
確かに、タイルそのものは非常に耐久性の高い材料です。
焼き物なので紫外線による色あせや劣化が少なく、長い年月が経ってもきれいな状態を保ちやすい。
タイルそのものだけを見れば、非常に優秀な外壁材だと思います。
ただし、家の外壁は「タイルだけ」でできているわけではありません。
現在の住宅で使われるタイル外壁には、下地材の上に接着剤でタイルを施工する工法があります。
つまり考えなければならないのは、
「タイルが何年もつか?」
だけではなく、
「タイルを支えている下地や接着部分まで含めて、外壁全体が何年健全でいられるか?」
ということです。
また、建物は何十年も使います。
その間に大きな地震が来るかもしれませんし、何かをぶつけてタイルを割ってしまうこともあるでしょう。
タイルが一枚、二枚破損しただけなら交換すればいい。
ところが20年、30年後、そのタイルがまだ製造されているとは限りません。
同じ色、同じ柄、同じ寸法のものが廃盤になっていれば、部分的な補修が思った以上に難しくなる可能性があります。
もう一つ気になるのが、表面から見えない部分です。
工法によってはタイルの下地として窯業系サイディングなどが使われています。
表面のタイルがきれいだからといって、その裏側までずっと健全だとは限りません。
雨水の浸入や結露などがあれば、表からは分からないところで下地に影響が出る可能性もあります。
これはタイルだから必ず起こるという話ではありません。
ただ、表面が非常にきれいな状態を保ちやすい材料だからこそ、内部の状態を外観だけで判断しにくいという点は知っておいた方がいいと思います。
さらに住み始めてから、
「ここにタープを付けたい」
「物干し金物を付けたい」
「外壁に何か固定したい」
となったときも、タイル外壁では簡単に穴を開ければいいというわけにはいきません。
タイルを割らないことはもちろん、防水層や下地の位置まで考えて施工する必要があります。
私はタイル外壁が悪い材料だと言いたいわけではありません。
むしろタイルそのものは耐久性が高く、外壁材として非常に優れた材料です。
ただし、
「タイルが長持ちする」ことと「タイル外壁の家がノーメンテナンスである」ことは別の話です。
家は30年、40年、場合によってはそれ以上使います。
その間には地震もあれば、台風もあり、何かをぶつけることも、住み方が変わって外壁に何かを取り付けたくなることもあります。
だから外壁材を選ぶときに私が大切だと思うのは、
「何年間メンテナンスしなくていいか」だけではなく、「何かあったときに直しやすいか」ということ。
どんなに耐久性の高い材料でも、家に使う以上「絶対にノーメンテナンス」とは言えません。
しつこいようですが、
タイル外壁も決してノーメンテナンスではありません。
AIがわかりやすい写真を造ってくれました♪

樹脂モルタルなどの塗り壁はどうでしょう?
樹脂モルタルをはじめとした塗り壁。
サイディングのように目地がなく、見た目もすっきりしています。
「目地のシーリングを打ち替える必要がないのだから、メンテナンスも楽なのでは?」
そう思われる方も多いと思います。
確かに、目地が少ないことは大きなメリットです。
ただし、塗り壁だからノーメンテナンスということにはなりません。
私が塗り壁で一番気になるのは、
「部分的に傷んだとき、それに気づくことができるのか?」
ということです。
塗り壁は、軒のない四角いデザインの住宅でもよく使われています。
ところが軒がなければ、当然、外壁には雨が直接当たり続けます。
水は本当に厄介です。
ほんのわずかな隙間でも、条件が揃えば内部へ入り込んできます。
もちろん、水が入ったからといってすぐに建物が傷むわけではありません。
他の外壁材と同じように、その内側に通気層があり、侵入した水分を排出し、乾燥できるようにきちんと設計・施工されていれば、リスクを抑えることができます。
だから私は、表面の仕上げ材だけを見るのではなく、その裏側がどうなっているのかを大切にしています。
最近では、通気層を設けない塗り壁の工法もあります。
もちろん、それぞれの工法にはメーカーが考えた防水方法があり、通気層がないから直ちに問題ということではありません。
ただ、家は10年、20年で終わるものではありません。
30年、40年と住み続けることを考えたとき、表面にひび割れや劣化が起きたらどうするのか。
もし水が内部へ入ったとき、どのように排出されるのか。
そして、内部で何かが起きたときに、それをどうやって発見するのか。
そこまで考えて外壁を選ぶ必要があると思っています。
また、どんな塗り壁でも永久に新築時の状態を保てるわけではありません。
長い年月が経てば、ひび割れや汚れ、表面仕上げの劣化などが起こり、状態によって補修や再塗装などのメンテナンスが必要になる可能性があります。
目地がない。
だからメンテナンスフリー。
そんな単純な話ではありません。
むしろ大切なのは、
「表面が何年もつか」ではなく、「水が入ったときにどうなるようにつくられているか」です。
これは塗り壁に限った話ではありません。
サイディングでも、タイルでも、ガルバリウムでも同じです。
外壁は雨を一滴たりとも入れないことだけに頼るのではなく、万が一入った水をきちんと排出し、乾かせることまで考える。
私はその方が、30年、40年先まで考えた家づくりだと思っています。
以上を踏まえたうえで、日本の風土、環境にあっているものとしてスギ板外壁の提案が多くなっています。
ものすごく長くなってしまったブログなので、いづれYouTubeでこのネタを話そうと思います。
しつこいですが、最後にもう一度。
『ノーメンテナンスの外壁はありません。』
「この外壁なら何十年も何もしなくて大丈夫」ではなく、何か起きたときにどう直せるのか。そこまで考えて外壁材を選ぶことが、長く住み続ける家では大切だと思っています。
みなさまのご参考になれば幸いです。